〒721-0964 広島県福山市港町1丁目4番24号(福山駅から10分 駐車場完備)
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今回は、当事務所にご相談いただいた「相続放棄と名義変更」に関する実際のご相談事例をご紹介いたします。
相続放棄を選んだにも関わらず、建物の解体や墓じまいといった費用を負担された相談者様のお話から、相続に関わる深いお悩みや解決策についてお伝えいたします。
福山市在住の相談者様のお兄様がご逝去され、相続人は兄弟4人に分かれました。お兄様には配偶者もお子様もいませんでした。
お兄様の相続財産には、福山市外の田舎にある宅地、畑、山林などの不動産と、150万円ほどの預金が含まれていました。
相談者様は「これらの不動産を自分では管理できない」との理由で、相続放棄をしたいというご意向でした。
ところが、話を詳しく伺っていくと、すでにその年の固定資産税の通知が届いており、相談者様が自ら支払っていたことがわかりました。さらに、「施設入居費用も自分で支払うつもりです」とのこと。これは相続放棄を希望されている方の行動としては非常に珍しいケースでした。
通常、相続放棄をされる方は「一切の財産も債務も引き受けたくない」という意向が強いため、固定資産税などの支払いを行うことは基本的にありません。なぜ相談者様はそれでも支払いを続けるのでしょうか?
さらに驚いたのは、他の兄弟の相続放棄にかかる費用まで相談者様がすべてご負担されるお考えだったことです。「相続放棄は各相続人の自由判断です」と丁寧にご説明し、兄弟の方とも直接連絡を取っていただくことになりました。
相談者様は、「お兄さん名義の家が老朽化し、白アリ被害で住める状態ではないので解体したい」「墓も名義人である兄の土地の上にあるため、墓じまいも進めたい」とご希望を口にされました。
しかし、ここで重要な注意点があります。
相続放棄をすると、法的には「最初から相続人でなかったこと」になります。
したがって、放棄後に財産を処分したり、解体・墓じまいを行ったりすると、相続財産を管理・処分したとみなされ、「相続放棄が無効になる恐れ」があるのです。
そこで当事務所からご提案したのは、「相続財産清算人の選任手続き」です。
相続人全員が相続放棄をした後、家庭裁判所に申し立てて相続財産清算人を選任することで、その清算人が相続財産を法的に管理・処分することが可能となります。
費用は相談者様にご負担いただく必要がありますが、相続放棄を維持したまま、家の解体や墓じまいといった行為が適法に実現できるのです。
相談者様は最終的に、「それなら安心です。そこまでお願いできますか?」と、安心されたご様子でした。
実は相談者様、心の中ではお兄様の不動産をしっかり相続して管理したいというお気持ちがあったのだと思います。しかし、ご自身が相続することで、将来自分の子どもに不動産の管理という負担を残すことになるのを心配されていたのです。
「道義的にほうっておけない」「田舎の家の周囲の方に迷惑をかけたくない」
そうした思いやりの気持ちが、今回の行動に表れていました。
このように、相続放棄をしたからといって全ての問題が終わるわけではありません。
不動産の名義変更や処分、墓じまいなど、残された課題は多岐にわたります。
福山市周辺で相続放棄、名義変更、相続財産清算人の選任などについてお悩みの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。
専門家として法的な手続きはもちろん、お気持ちに寄り添ったご提案をさせていただきます。
※本事例は個人が特定されないよう一部加工を施しています。