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ご主人を亡くされた奥様から家の名義変更について相談をお受けしました。ご主人と奥様との間に子どもはおらず、法律上の相続人は、奥様とご主人の兄弟でした。
ただ奥様には前夫との間に子ども(息子)がいて、ご主人と奥様はその子に家を相続されていきたいと願っていました。
ご主人が何も手続きをしていない場合に、ご主人が亡くなられた後、家の名義変更をしようと思ったら、兄弟全員(兄弟が亡くなられていた場合にはその子ども)の承諾をもらわないといけません。
そして、遺産分割協議書に実印を押印してもらい、印鑑証明書を提出してもらう必要があるのです。
関係が希薄な間柄で印鑑証明書をください、なんて言ってもそう簡単に応じてもらえないことが多いのが実情です。
今回のケースでは、公正証書による遺言書があったのでその点はクリアでした。
遺言書を残しておいてくれたおかげで、ご主人が亡くなられた時点で効力が発生し、法律上の家の名義は奥様へ移っていることになります。
しかし、名義は移っている、と言っても第三者に対して、自分の名義であると主張するためには法務局において登記手続きを行い、きちんと所有権移転の手続きをとる必要があります。
ご主人が亡くなられて、遺言書により奥様へ所有権が移り、次に奥様が亡くなられた時の相続人は子どもである息子様が一人だけでした。
そこで息子様が考えられたのは、今、ご主人から奥様へ名義変更することなく、この先奥様が亡くなられた段階で自分(息子様)へ一回で相続による名義変更をすれば良いのでは、と思われたのでした。
確かに奥様が亡くなられた後に、一回の登記手続きでご主人から息子様へ名義を変えることは可能です。
そのようにした場合には、名義変更にかかる司法書士の手数料も1回分でしょうし、名義変更時に法務局で収める登録免許税(印紙代)も一回分で良いことになるのです。
そこだけ見れば、まとめて登記することは良いことづくしのような気もします。
しかし、そうではないのです。とんでもない危険性が隠れています。
その危険性とは、
遺言に基づいてご主人から奥様への名義変更をしない間に、相続人である兄弟の誰か一人が相続人全員の共有による所有権移転登記をおこなって、その自分だけの共有持分(例えば4分の1)のみを誰かに売ってしまうことです。
皆様思われると思います。
誰がそんな他人の、しかも4分の1しかない持分を買う人がいるのかと。
それがなんといるのです。
共有持分を安く買い取って、他の共有者に高く売ることを商売としている業者がこの世には存在しているのです。
名義変更していない間に、お金に困った相続人の誰か一人が業者へ売ってしまう、なんてことが考えられるのです。
本来は他の相続人の承諾をもらった上で100%の名義を自分に変えたり、といったケースが多いですが、そうではなく、相続人の法定相続分に応じた持分で共有名義で相続登記を行うことは相続人の一人からの申請で登記可能なのです。
非常に怖いですよね。
遺言書により家を相続した奥様としては、自分に相続させると遺言書ではなっているのになんで兄弟が勝手に共有の相続登記をいれて第三者に売却するすることができるのかと疑問だと思います。
しかし、現実にそんなことができてしまうとこに名義変更をしない危険性が隠れているのです。
親族の人が住んでいる家を勝手に共有名義にして、勝手に売却するなんて通常では考えられないかもしれません。しかし、今のこんな世の中、どんなお財布事情の相続人がいるかわかりません。
自分の家は、相続による名義変更(相続登記)をすることできちんと自分で守りましょう。