〒721-0964 広島県福山市港町1丁目4番24号(福山駅から10分 駐車場完備)
お気軽にお問合せください
『相続放棄が裁判所に認められれば、
もう相続財産とは一切関係ない!』
と思われている方が非常に多いのですが、
決してそんなことはありません。
たしかに、借金についてはこれ以上追及されることはありません。
しかし、不動産がある場合は少し違います。
法律によって次のように定められているのです。
相続の放棄をした者は、その放棄によって相
続人となった者が相続財産の管理を始めるこ
とができるまで、自己の財産におけるのと同
一の注意をもって、その財産の管理を継続し
なければならない。
例えば、第1順位の相続人が相続放棄をした場合は、第1順位の人は、第2順位の人
が相続財産の管理を始めることができるまでは、一定の管理責任があることになり
ます。 なので、第1順位の相続人が相続放棄の手続をして家庭裁判所に認められた
ら、その人は、第2順位の相続人へ相続権が移ったことを教えてあげて、空家の管
理をするように伝える必要があるでしょう。
書面等で知らせてあげれば、その時点で相続放棄者は管理責任を免責されます。
反対に、そのように知らせないままにしていると、いつまでたっても第2順位の相続人は相続財産の管理を始めることができないので、相続放棄者(第1順位の相続人)は責任を負い続けることになります。
また相続放棄したとしても「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(通称空き家法)の「管理者」に該当するのです。
空き家法の規定には、次のような内容があります。
空家等の所有者又は管理者(以下「所有者
等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響
を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努
めるものとする。
この「管理者」の中に、相続放棄をした者も含まれると考えられています。 なので、相続放棄したとしても、民法という法律上も一定の責任を負いますし、空き家法という法律上も責任を負うということになります。
それでは次に「相続放棄した方には空き家に対して具体的にどのような責任が生じ
るのか」をお話ししていきます。
具体的な責任の話の前にどのような空き家なのかによって変わってきます。
そもそも「空き家」と一言でいっても詳しくは2種類あるのです。
1. 単なる空き家
→「空き家等」
2. 倒壊の危険性がある空き家
→「特定空き家等」
「特定空き家」は、市町村等から指定されることによってはじめて成立します。
イメージとしては、倒壊の危険性があったり、ゴミ屋敷状態であったり、近隣住民に危険・迷惑を及ぼしているような建物は「特定空き家等」と指定を受けます。
市町村に「特定空き家等」と指定されると、市町村が管理者に代わって空き家を解体して、その費用を管理者に請求してきます。これを行政代執行といいます。
行政代執行にかかる費用は、数十万、数百万円を超える費用を請求されるケースもあります。
公表されているデータによると、全国で「特定空き家等」に指定された約10000件のうち、行政代執行までされて空き家が解体されたものは約20件ほどあります。確率は低いですが、0ではないです。
行政代執行までされなかったとしても、建物の解体や修繕等は当然の義務として行わなければなりません。そして、それらの費用は空家の所有者や管理者の負担となります。 では「特定空き家等」に指定されなければ安心かというと、決してそんなことはありません。例えば空き家の倒壊・火事などにより他人に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負うこともあり得ます。
結論を先に言いますと、
「空き家法」の「管理者」ではあるが責任は問えない、となります。
回りくどい言い方ですが、責任を負わなくて良い、というと語弊があると思います。
確かに、相続放棄をした人でも「空き家法」における「管理者」には該当します。 しかし、責任を負わないといけないのは、正当な理由なく、市町村の指示に従わなかった場合です。
相続放棄した人は解体などの処分行為は相続を承認したともみなされるため、実質的に行うことができません。市町村等から命令を受けてもこれに従うことができない「正当な理由」があると言えます。 なので、行政代執行にかかる空き家の解体費用などを負担する必要はないと考えられるのです。
相続放棄した方は、次の順位の相続人等が管理できるようになるまでは管理責任があるという点がありました。
この管理責任は、次の順位の相続人等に対する責任と解されています。
なので、市町村などの行政に対して負う責任でもなければ、第三者(例えば空き家から被害を受けている隣人)に対して負う責任でもないと解されています。
以上のことから相続放棄をしておけば、市町村や第三者から責任は問われない、と考えられます。
ですが、「責任を問われないから何もしなくて良い」わけではないと思います。
簡単に判断するのではなく、専門家に相談して判断するようにしてください。